研究概要 |
1.層状窒化物β-MNCl(M=Zr, Hf)の層間にリチウムをインターカレーションすることにより、窒化物層に電子をドープできる。母結晶はバンドギャップ3-4eVの半導体であるが、インターカレーションにより、ZrNClではTc=14K、HfNClではTc=25.5Kの超伝導体となることを発見した。層間のリチウムには種々の極性溶媒がコインターカレーションされるため、層間を開いて、超伝導の異方性をさらに増大することができる。NMRおよびミュオンのスピン緩和測定から、この超伝導体の特徴として、(i)二次元異方性が強いエキゾチック超伝導体、(ii)フェルミ面付近でのキャリヤー密度は〜10^<21>/cm^3できわめて低い、(iii)^<15>N置換による同位体効果が殆ど観察されない、(iv)フォノンによる励起が低いことが明らかになっており、従来のBCS機構では理解できない特異な超伝導体であることを示した。 2.β-MNClは物性的に興味ある物質であるが、軟らかい層状物質であることから、単結晶の合成は困難と考えられていた。しかし、当研究者らは、塩化アンモニウムをフラックスとして、高圧合成することにより、〜1mmの単結晶の合成に成功した。β-MNX(M-Zr, Hf ; X-Cl, Br, I)全ての組み合わせについて、単結晶を合成し、精密な単結晶X線構造解析を行った。物性研究者への単結晶の提供も可能となった。 3.層状窒化物における高温超伝導体の発見に関連し、窒化物人工格子薄膜の合成を試みた。窒素ラジカル源を装備した電子ビーム蒸着装置およびレーザーアブレーション蒸着装置を用いている。レーザーアブレーションにより、MgO基板上にTiN薄膜をlayer-by-layerでエピタキシャル成長させることに成功した。Si(100)基板上に、Siとのミスフィットが大きいCrNがエピタキシャル成長することを明らかにした。CrNとNbNの積層膜合成の可能性についても研究を行った。
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