研究概要 |
ガラスの中の構造不規則性として,ミクロ分相と共に構造中に原子レベルの大きさの空隙が存在することが重要であるとの考えに基づいて,この両者を同時に測定する手段としてシェリュプスキー光散乱法を採用し,本年度はこの方法による評価の第1段階として,シリカガラスとパイレックスガラスに対する評価を行った。その結果,次のような知見が得られた。 ガラスをスタンプミルにより衝撃破砕して平均粒径77μmの粉末を採取し,種々の条件で熱処理した。ガラス試料および屈折率がガラスとほぼ等しい浸液を光学セルに入れ、耐圧容器中で圧力変化により浸液の屈折率を変化させながら,最大透過率Tmaxを求めた。ガラスが均質であればTmaxは100%になるが、ガラス中に不均質性があると散乱が生じTmaxが低くなる。 パイレックスガラスのTmaxは熱処理前は31%であり、580℃,0.5hの熱処理で96%と最高を示した。また熱処理温度500℃以下では処理時間と共にTmaxは増大し,これは,パイレックスガラスは開放構造であるため破砕により部分的高密度化が生じるが、熱処理によりそれが緩和するためと考えられた。これに対し550〜600℃の熱処理では、Tmaxは一旦高くなった後、熱処理時間と共に減少した。これはパイレックスガラスが分相性のため、Tg付近の温度で熱処理すると分相が進行し、緩和により一旦は増加したTmaxが再び低下したものと考えられる。 シリカガラスでも破砕に伴う高密度化と熱処理によるその緩和が観測され,緩和速度は熱処理温度と共に単調に増加した。700℃熱処理ではTmaxは1hで76%まで回復し,その後は緩和がほぼ停止した。これに対し1000℃熱処理ではTmaxは92%以上になる。このことから、シリカガラスの緩和は、活性化エネルギーの小さい成分と大きい成分を共に含むと考えられる。
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