アルデヒドへのalk-2-enyl化によるホモアリル型アルコール合成は、従来簡便な方法はなかった。われわれはここでallyl-transfer反応によるbut-2-enyl化反応を開発し、その簡便さ、[3.3]-シグマトロピー転移を経由する高い立体選択性を証明した。この反応をさらに展開し、光学活性メントンを不斉助剤とするallyl-transfer反応によるアルデヒドのalk-2-enyl化反応が可能であることを明らかにした。さらに、この反応ではアルキル鎖が長くなるに従って収率が向上することを発見した。 これに対して、アルキル鎖を持たないprop-2-enyl化反応では、反応の進行(時間の経過)にともなって化学収率は高くなるものの、不斉収率が低下(ラセミ化)することを発見した。これによって、近年数多く報告されている酸触媒反応による不斉prop-2-enyl化反応では、allyl-transfer反応によるラセミ化問題に対処できていないことを明らかにした。 allyl-transfer反応によるアルデヒドのalk-2-enyl化、特に不斉合成は有機合成上きわめて価値の高い反応である。本反応によって得られる光学活性ホモアリルアルコールを用いる光学活性多置換テトラヒドロピラン誘導体の効率的合成法を開発した。多くの生物活性化合物の光学活性体の効率的合成が可能となる。
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