研究概要 |
3位にオルトスチリル基を持つシクロブタノンに、配位子としてdppp (Ph_2PCH_2CH_2CH_2PPh_2)を持つカオチン性のロジウム(I)錯体を作用させたところ、benzobicyclo[3,2,1]octam-3-oneが81%の収率で生成した。この結果は、目的としたオレフィン挿入反応が起こったことを示す。これにより当初目指したこと、即ち炭素-炭素結合をロジウムにより活性化し、ビニル基を挿入させることに成功した。昨年度は配位子としてdppe (Ph_2PCH_2CH_2PPh_2)を用いると開環した不飽和ケトンが生成することを見出しているが、二座配位子の鎖長をdppeからdpppへと一炭素伸ばすだけで、全く異なる反応が進行することは極めて興味深い。上記の反応では、二種類の活性化機構を考えることができる。カルボニル炭素とα位炭素間の結合が活性化されて、そこヘビニル基が挿入する機構と、α位炭素間とβ位炭素間の結合が活性化されて、そこへ挿入が起こる機構である。今後、ビニル末端に^<13>Cを導入した基質を合成して反応を行い、^<13>Cラベル化炭素が生成物のどこに位置するかをみることにより、いずれの機構で反応が進行しているか調べる予定である。
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