研究概要 |
低原子価塩化チタンと光学活性アミンとの混合物をベンズアルデヒドに作用させると不斉ピナコールカップリングが進行することをみいだした。この際,用いる反応剤はTHFの溶液であるが,この溶液内の構造を小角X線散乱(SAXS)を用い調べたところ,大小二種類のクラスター混合物であることが明らかになった。このような,有機反応剤の溶液に関する構造研究は新しい試みであり,従来画一的にとらえられていた金属反応剤の構造を細かく知ることができた。また,この溶液を超平坦サファイアに塗り,原子間力顕微鏡を観察し,SAXSの結果を間接的に確かめることもできた。 本方法は、溶液中の活性種を観察する方法としては、新しい試みであり、溶液中の不安定種を観察するという、従来では困難であることを試みている。溶液という述語は、本来完全に均一状態であることを意味するが、我々が実際に使用する際は、見かけが均一であるという意味に使用している。このように、溶液と称されるものの内部を分子スケールでみると、実際は何種かの大きさの粒子の混合状態であることがわかる。このことは、有機反応における反応の制御、とくに立体化学の制御に大きな影響を与えることが予想される。これらの情報を分子変換反応における実際の操作に反映することができれば、分子レベルの反応制御が可能になることになる。そこで、前述の不斉ピナコールカップリングにおいて、硫黄原子を含む配位子を加え、より均一状態を実現することをめざし、反応を行い、不斉収率の向上を実現した。
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