研究概要 |
低原子価塩化チタンと光学活性アミンとの混合物をベンズアルデヒドに作用させると不斉ピナコールカップリングが進行することをみいだした。この際,用いる反応剤はTHFの溶液であるが,この溶液内の構造を小角X線散乱(SAXS)を用い調べたところ,大小二種類のクラスター混合物であることが明らかになった。このような,有機反応剤の溶液に関する構造研究は新しい試みであり,従来画一的にとらえられていた金属反応剤の構造を細かく知ることができた。また,この溶液を超平坦サファイアに塗り,原子間力顕微鏡を観察し,SAXSの結果を間接的に確かめることもできた。低原子価チタン-アミン錯体によるピナコールカップリングは、見た目は溶液状態で進行し、これまでの概念では「均一系」である。しかし、不斉合成を行う場合、その「均一さ」に厳密度が求められる。この測定により、半径7.7Åの球状粒子と半径85.0Åの球状粒子が550:1の数比で存在することが明らかになったのである。言い換えれば、この均一系と称する溶液は、実際にはこのような粒子の混合物であることが測定により明らかになり、有機金属を用いる場合の均一性ということは、厳密には非常に難しい状況であることがわかった。 また、有機金属化合物の溶液状態での構造を明らかにするために異常小角散乱を測定した。対象となる試料は、bis(iodozincio)methaneである。測定のセルや条件の設定をみいだし、最終年度のデータ収集に備えることができた。
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