研究概要 |
Bis(iodozinciomethane)中心に有機金属化合物の溶液での構造解析を行った。構造解析は,X線異常散乱法による部分構造解析と,中性子小角散乱法による粒度分布を組み合わせ行った。この結果,bis(iodozinciomethane)は会合することなく,Schlenk平衡を起こす事もなく,THF中では単量体として存在していることが明らかになった。この二つの方法の組み合わせによる溶液中の有機金属化合物の構造の研究は,普遍性の高い新規な確実な方法であり,今後継続して他の有機金属化合物の溶液内での構造を決定していく。 Bis(iodozinciomethane)の構造が,単純な単量体であることから,この化合物が一つの炭素に二個の亜鉛原子が置換した特殊なルイス酸であることが期待された。この構造から,ルイス塩基としては,隣接した炭素上に酸素等のヘテロ原子が置換した基質が適当と考えられる。2,3-エポキシアルコールを基質としてbis(iodozinciomethane)を作用させると,face-to-face型の配位によりピナコール転位が進行した。通常のプロトン酸あるいはルイス酸によるピナコール転位は,転位する炭素上では,SN2型の立体反転を伴い反応が進行する。しかし,この反応の場合は,立体が保持で進行する。これは,ルイス酸として用いたbis(iodoznciomethane)の特異な構造によるものである。
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