研究概要 |
2通りのアプローチで選択的なピナコール型1,2-ジオール合成に取組んだ。 1 脂肪族アミンの配位した3価のチタン錯体TiCl_3(tmeda)(thf)を4価チタン錯体TiCl_4(tmeda)の亜鉛還元により合成する手法を確立した。このとき、微量の塩化鉛(II)とTMEDAの添加が重要であることを見いだした。また、TiCl_3(tmeda)(thf)を単離し、その単結晶をX線結晶構造解析した。さらにその3価チタン錯体が、芳香族アルデヒドのピナコールカップリング反応に有効であることを見いだした。そのピナコール反応では、dl体のジアステレオマーが高立体選択的に得られることがわかった。 2 1電子還元剤であるクロム(II)をα,β-不飽和ケトンに作用させると、1電子移動により、クロム(III)エノラートラジカルが発生する。無水条件下でこの反応を行ない、1電子移動を契機とする新しいパターンの炭素-炭素結合生成反応を検討した。本年はとくに、α,β-不飽和ケトンを無水DMF溶媒中で、アルデヒドとEt_3SiCl共存下にクロム(II)塩で処理し、両者の交差ピナコール型カップリング生成物を得る方法を開発した。また、この反応における立体選択性(ジアステレオマー比)が反応温度により大きく変化することを見いだした。鎖状のα,β-不飽和ケトンを用いた場合には、低温ではanti体が主生成物となり、反応温度を上げるとsyn体が選択的に得られた。これは、γ位にEt_3SiO基を有するアリルクロム化合物間の動的立体化学制御が達成できたことによる。
|