研究概要 |
(1)シスおよびトランス構造をもつ1,4-ビス(トリメチルシリル)-1-ブテン-3-イン(1)の触媒的ヒドロシリル化反応では1の幾何構造と触媒の選択によって反応の位置および立体選択性を高次に制御できることを見いだした。すなわち、4種類の構造異性体を93%以上の純度で作り分けることができた。 (2)ルテニウム錯体触媒による末端アルキンのヒドロシリル化反応について、触媒反応に関与するすべての素反応を解明できた。すなわち反応は、ヒドリドルテニウム錯体へのアルキン挿入反応を経由するChalk-Harrod型触媒サイクルと、シリルルテニウム錯体へのアルキン挿入反応を経由するModified Chalk-Harrod型触媒サイクル、ならびに、これらのサイクルを橋渡しする2つの素反応過程から構成されている。前者のサイクルからは(E)-アルケニルシランが、一方後者からは(Z)-アルケニルシランがそれぞれ選択的に生成する。触媒反応の選択性は、それぞれのサイクル中に発生するアルケニルルテニウム錯体の反応選択性に明確に依存している。単離したアルケニル錯体を用いてそれらの機構を解析した結果、ホスフィン配位子の解離平衡を制御することによって、これらの鍵過程を精密に制御できることが分かった。反応機構に関する以上の知見を基に、(E)-および(Z)-アルケニルシランを91-99%の選択性で作り分けることができた。
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