研究概要 |
(1)ルテニウム触媒によるアルケンの立体選択的ヒドロシリル化反応を利用して、高分子発光材料として注目されているポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)を高い立体選択性で合成できることを見いだした。まず、HSiMe_2Ar (Ar=2-thienyl,3,5-(CF_3)_2C_3H_3)を用いるp-ジエチニルベンゼンのヒドロシリル化反応について検討し、RuHCl(CO)(PPh_3)_3およびRuCl_2(CO)(PPr^i_3)_2をそれぞれ触媒として用いることによって、(E, E)-および(Z, Z)-1,4-bis(2-silylethynyl)benzeneを99%以上および91-92%の立体選択性で合成できることを明らかにした。続いて、得られたヒドロシリル化生成物と1,4-dioctyloxy-2,5-diiodobenzeneとをBn_4NFおよびパラジウム触媒の存在下にTHF中で反応させ、主鎖のビニレンユニットが99%以上(E)配置のPPVと66%(Z)配置のPPVを、それぞれ高収率で合成した。 (2)1,2-diaryl-3,4-bis(2,4,6-tri-t-butylphenylphosphinidene)cyclobutene配位子(DPCB)をもつメチルパラジウム錯体とヒドロシランとの反応によってPdH(OTf)(DPCB)錯体を定量的に発生できることを見いだした。また、この錯体が極めて酸性度の高いヒドリド錯体として働き、アリルアルコールのC-O結合を穏和な条件下に切断することを明らかにした。さらに、この知見を基に、アリルアルコールをアリル化剤とするN-およびC-アリル化触媒反応を開発した。いずれの反応も、室温から50℃程度の穏和な条件下、90%以上の収率で進行した。 (3)cis-シリル(ボリル)白金錯体を合成単離した。また、この錯体を用いて、パラジウムおよび白金触媒を用いるアルキンのヒドロホウ素化触媒反応に対して従来提案されてきたすべての素反応過程を、逐次的に検証できることを示した。
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