研究概要 |
Boc-(L-Leu-Aib)_n-OBz1 (n=8,12,16;OBzlはベンジルエステル)を合成し、水面上と水/メタノール(1/1)混合溶媒上に展開し、サブフェーズ上のヘリックスペプチドの配向をFTIR-RASを測定して調べた。これらのペプチドを気体状態で展開すると、圧縮しても配向は変化せず、水面にヘリックスは横たわったままであった。しかし、液体状態で、ペプチド分子を展開すると、アミドIとアミドIIのシグナル比から求めたヘリックス軸の界面垂直方向からの角度は、40度前後あるいは更に小さな値となった。また、混合溶媒上のほうが角度は小さくなった。しかしながら、金基板ヘトランスファーすると水平配向へと変化した。そこで、金基板上に混合溶媒をおき、ペプチドを展開した後、溶媒を蒸発させることによりペプチド単分子膜を基板上に移す操作を繰り返した。10回繰り返して得た膜について、FTIR-RASを測定してヘリックス軸の重直方向からの傾き角を求めたところ、23度と非常に垂直に近い配向をとる膜が得られた。ヘリックスペプチドは大きなダイポールモーメントを有しているが、水表面あるいは金基板上に展開すると、そのイメージダイポールが発生し、これとの静電相互作用を強めるため水平配向を取りやすいと考えられる。サブフェーズの誘電率を下げたり、ペプチド分子の位置を金表面から遠ざけることでこの静電相互作用を抑制でき、垂直配向のヘリックスペプチド配向膜を得ることができたと考えられる。
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