金基板上に3種類のヘリックスペプチドSAMを調製し、それぞれの機能を解析した。1)発色団であるインドール基を有するトリプトファンとヘリックスを安定化させる効果のあるα-アミノイソ酪酸を用いた9量体ペプチドにリポ酸を結合した化合物、SST3Bを分子設計した。対照化合物には、末端にトリプトファンを持つアルキル化合物SC15Tを用いた。合成したSST3B'はN末端側の2つのインドール基が水素付加されている(DH体)ことが分かった。また水素付加したインドール基(DH体)ではホルミル保護基が外れていなかったが、DH体は電子移動のホッピングサイトあるいはドナーアクセプター間の波動関数の重なりを強めるサイトとしては十分機能すると考えた。合成した9量体ペプチドSST3B'は、エタノール溶液中で3_<10>ヘリックス構造とっていることが示された。また、SST3B'SAMにおいて光アノード電流発生が確認できたことから、3_<10>ヘリックス構造においてヘリックス軸に沿って一直線上にならんだトリプトファンDH体側鎖が電子メディエーターとして機能することが示唆された。2)発色基として光増感作用をもつN-エチルカルバゾリル(ECz)基をC末端に有するSSL16ECzの合成し、SAMの調製、キャラクタリゼーション及び光電変換特性の検討を行った。このヘリックスペプチドSAMは稠密であったが、励起状態でECz基同士に相互作用はなかった。このSSL16FCz SAMを、299nmの紫外光で照射したところ、光アノード電流の発生が確認でき、量子効率は0.19%とヘリックスペプチドSAMとしては高い値であった。規則正しい垂直配向膜の形成が効率上昇の原因と考えられる。3)クラウンエーテルを末端に結合したヘリックスペプチド複合体を合成し、硝酸鉛水溶液上に展開して単分子膜を調製し、金基板上にトランスファーした。これにより、Pb^<2+>イオンが基板上にトランスファーされ、硫化反応によりPbSの数原子層厚のネットワークが形成された。この薄膜は半導体的性質を示した。
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