金基板上および石英基板上にヘリックスペプチドを垂直配向で固定化する方法を確立した。前者では、リポ酸とその誘導体あるいはチオフェノールをヘリックスペプチドの末端に導入し、金基板上に共有結合で固定化した。後者では、石英基板上にアンモニウム基を導入し、ヘリックスペプチドにアルデヒド基との間にシッフベース形成により固定化した。いずれも、ヘリックスペプチドの高い分子集合体形成能を賦与する分子設計を行うことにより、垂直配向となることをFTIR-RAS測定等により確認した。このようにして調製した垂直配向ヘリックスペプチド自己組織化膜(SAM)について、測鎖に導入した官能基を通しての光励起エネルギー移動と光電変換の各機能評価を行った。前者については、発色団であるインドール基を有するトリプトファンとヘリックスを安定化させる効果のあるα-アミノイソ酪酸を用いた9量体ペプチドにリポ酸を結合した化合物、SST3Bを分子設計した。合成したSST3B'はN末端側の2つのインドール基が水素付加されている(DH体)ことが分かった。また水素付加したインドール基(DH体)ではホルミル保護基が外れていなかった。合成した9量体ペプチドSST3B'は、エタノール溶液中で3_<10>ヘリックス構造とっていることが示された。また、SST3B' SAMにおいて光アノード電流発生が確認できたことから、3_<10>ヘリックス構造においてヘリックス軸に沿って一直線上にならんだトリプトファンDH体測鎖が電子メディエーターとして機能することが示唆された。機能に関する後者の例として、発色基として光増感作用をもつN-エチルカルバゾリル(ECz)基をC末端に有するSSL16ECzの合成し、SAMの調製、キャラクタリゼーションおよび光電変換特性の検討を行った。このヘリックスペプチドSAMは稠密であったが、励起状態でECz基同士に相互作用はなかった。このSS16ECz SAMを、299nmの紫外光で照射したところ、光アノード電流の発生が確認でき、量子効率は0.19%とヘリックスペプチドSAMとしては高い値を得ることができた。この他、クラウンエーテルを末端に結合したヘリックスペプチド複合体を合成し、硝酸鉛水溶液上に展開して単分子膜を調製し、金基板上にトランスファーした。これにより、Pb^<2+>イオンが基板上にトランスファーされ、硫化反応によりPbSの数原子層厚のネットワークが形成された。この薄膜は半導体的性質を示し、電子的機能化薄膜を調製できることがわかった。
|