研究概要 |
本研究はこれまで不可能であった重縮合における高分子の分子量及び分子量分布の制御を連鎖重合で進行する重縮合(連鎖重縮合)によって達成し、かつ得られた新規精密高分子のこれまでにない自己組織化現象を探索することを目的とした。この研究によってこれまで単に構成材料として主に使われてきた縮合系高分子が、ブロック共重合体のような緻密な分子アーキテクチャーの1つの構成要素として使えるようになるだけではなく、剛直な縮合系高分子を含む高分子の新しい自己組織化現象の発見が期待される。本年度は連鎖重縮合による(1)グラフトポリマーの合成、(2)スターポリマーの合成、(3)二芳香環モノマーの連鎖重縮合、(4)ポリチオフェンの分子量と分子量分布の制御、を検討した。 (1)ではフェニルエステル部位を有するポリスチレンを合成し、このエステル部位を開始部位とするポリアミド合成の連鎖重縮合を行った。その結果、ポリスチレンに芳香族ポリアミドがグラフトした新規グラフトポリマーが得られた。(2)では三官能性フェニルエステル開始剤を合成し、このエステル部位を開始部分とするポリアミド合成の連鎖重縮合を行った。その結果、三本鎖のポリアミドスターポリマーが得られた。それぞれの鎖は分子量分布狭く、分子量が制御されていることを鎖の切断実験から確認した。(3)では2つの芳香環に求核部位と求電子部位をそれぞれ有するモノマーとして、4-フルオロ-4'-ヒドロキシジフェニルスルホンの連鎖重縮合を検討した。その結果、20量体までは分子量と分子量分布が制御されたポリエーテルスルホンが得られた。(4)では2,5-ジブロモ-3-ヘキシルチオフェンのGrignard試薬とNi触媒を用いる重縮合の連鎖重合性を検討した。その結果、モノマー転化率に比例して分子量が分子量分布の狭いまま増加することよりこの重縮合が連鎖重合で進行することを明らかにした。また分子量もNi触媒の量によって制御できることを見出した。
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