[1]流動下での結晶成長の可視化(滝本) 我々の開発した装置により、流動下での結晶成長の直接観察を行っている。本年度は特に、分子量の影響について調べた。その結果、流動の影響は応力で整理出来ることが分かった(即ち、分子量が小さい試料では、粘度が低い分だけ高いせん断速度を与えると、高分子量の試料とほぼ同様の結果を得る)。低応力下では通常の球晶成長が観察されるが、核生成速度はずり速度の指数関数的に増加する。高応力下では、小さな球晶が多数列状に並んだ構造をとる。 [2]結晶化発熱と粘弾性の同時測定(小山) 昨年度開発した装置を用いて、レオロジー測定中に得られた結晶化発熱量の積分から結晶化度を求めた。その結果、せん断粘度ηと結晶化度Xcの関係はη(Xc)=η(O)exp(αXc)でよく表せることを見出した。ここでαはせん断速度に依存するので、同じ結晶化度でも、せん断速度により内部構造が異なることを示唆する。 [3]せん断下でのPVT測定(小山) 昨年度開発した装置を用いて、高圧・せん断流動下での結晶化の速度を定量的に解析した。この結果より、(1)圧力Pが結晶化の速度に与える影響は、平衡融点T_m^0の圧力による上昇による過冷却度ΔT=T_m^0(P)-T_cの増加で整理することが出来た。(2)せん断速度が結晶化の速度に与える影響は、結晶化温度T_c圧力Pによらない結晶化誘起ひずみで表すことが出来た。(3)結晶化の速度は、無せん断時の速度と流動誘起結晶化による速度の和で表せることが分かった。 以上の結果は、成形過程における結晶化をCAEにより予測するのに極めて有用な知見になり得る。より広い範囲の試料、温度、圧力、ひずみ速度及び変形様式(一軸伸長など)での検証が望まれる。
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