電荷注入・溶媒牽引の考え方で、ゲル状物の高速大変形が可能であることを実証し、応用の仕方によっては、新規な駆動系の構築に利用できることが明らかになってきた。 高度に膨潤したゲルでは、ポリマーネットワークの緻密さによる顕著な影響を受けることを明らかにしたが、この詳細については尚検討が続いている。可塑化した高分子材料の場合には高度膨潤系とは全く異なる変形であるアメーバ様のクリープを生じることを示し、それも可逆的に長期間にわたって繰返し駆動が可能であるなどの知見を得た。 この場合の、構造変化は、まだ十分に解決されているとは言えないが、大まかな概要は把握できた。それによると、従来の弾性体の変形ではなく、著しい電気粘性的な変形挙動であることが示された。最大変位は400%を越える。 高度膨潤型の高分子ゲルでも、詳細な変形過程の解析から、電極間の引力による収縮に引き続く形で非対称圧力分布が成長し、その結果屈曲変形を生じることが示された。高分子に注入された電荷が放電に対して抵抗する場合があり、これが電荷の蓄積をもたらし、結果的に材料内に非対称な電荷分布を誘起する。この結果、屈曲するものと説明され得ることが明らかになった。歪みは遥かに少ないが、ポリウレタンエラストマーでも同様の現象が見られる。この場合には、明瞭な形で電場方向に電荷の非対称分布を確認することができ、化学構造による屈曲方向の制御などが可能であることを明らかにした。エラストマー中の電荷分布は履歴の影響を顕著に受け、これは、エラストマーを薄膜状にすることで高速大変形を誘起することに有効に寄与することを明らかにした。また、電荷の移動が、ゲルの場合には流動を誘起することが知られていたことを利用するとEHD型の送液ポンプができることを示した。
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