研究概要 |
コロイド結晶構造に及ぼすカウンターイオン種の影響について、超小角X線散乱法(USAXS)により詳細な調査を行った。検討したイオン種は、Li^+, Na^+, K^+, TMA^+ (テトラメチルアンモニウムイオン)である。カウンターイオンがすべてプロトン(H^+)の場合、USAXSにより求められるコロイド結晶内における粒子間距離は、均一分布を仮定した計算値より15-20%小さく、何らかの引力的相互作用が、コロイド結晶が生成する極めて低いイオン強度条件下で発現していることは既に我々が報告したとおりである。このプロトンを徐々に、上記イオンに置き換えて粒子間距離を測定したところ、いずれのイオンに対しても、粒子間距離は増大し、数割が置き換わった時点で均一仮定の計算値と一致した。すなわち、これらいずれのイオンも引力的相互作用を弱める働きがあることがわかる。還元すれば、引き締まったコロイド結晶が生成するのは、プロトンの特異性にあると考えられる。引力を弱める程度は、K^+>Na^+>TMA^+【approximately equal】Li^+の順であり、イオンの運動性を反映するStokes半径の順列というより、表面電荷密度の順番であった。よって、我々の提唱する、「E1ectrodynamic Interaction」は、プロトンの持つ非常に大きな等量電導度により発現している可能性が高い。しかしながら、コロイド結晶発現条件では、コロイド粒子周りのイオン雰囲気は強制的に極度にオーバーラップする異常な状態であるごとは確認されており、これによりもたらされる特殊な事情、すなわちカウンターイオンの多粒子による共有や、異常な電場形成による水の構造形成なども重要な因子と考えられ、これらを考慮した総合的考察が今後の検討課題である。
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