我々の提唱する「Electrodynamic Interaction」の発現機構を実証するため、コロイド結晶構造に及ぼすカウンターイオン種の影響について、超小角X線散乱法(USAXS)により詳細な調査を行った。コロイド結晶における粒子間距離は、イオン強度が増加すると減少することが知られていたが、我々は、10^<-5>M以下の塩濃度においては、逆に増加することが見いだした。これはコロイド粒子間に静電的引力相互作用が存在することを意味するが、これは旧来より提唱されてきた単純な静電的引力ではないことは明らかであった。我々は、コロイド粒子を取り巻くカウンターイオンが重要と考え、まず、カウンターイオンをプロトンからナトリウムに置換する実験を行った。プロトン/ナトリウムイオンの比率が変化すると、粒子間距離は変化し、相互作用はカウンターイオンの種類依存があることが明らかとなった。カウンターイオンとしてその種依存がある性質は、イオンの表面電化密度および拡散係数が考えられる。そこでカウンターイオンとしてのプロトンを他のイオンに置き換える実験を行った。いずれのイオンに対しても、粒子間距離は増大し、やがて一定値となった。よって、これらいずれのイオンもプロトンの場合に比し、引力的相互作用を弱める作用があることが確認された。引力を弱める程度は、K^+>Na^+>TMA^+【approximately equal】Li^+の順であり、表面電荷密度の順番であった。よって、我々の提唱する「Electrodynamic Interaction」は、塩濃度10^<-5>M以下のイオン雰囲気が強制的に極度にオーバーラップする異常な状態でカウンターイオンがプロトンの時のみ発現することが明らかとなった。プロトンの時のみ発現することから、「Electrodynamic Interaction」の発現機構には、プロトンジャンプに起因する以上に高い当量電導度が関係していると考えられる。
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