結合相関系高分子のゲル化およびガラス化のスローダイナミックス

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12450388
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 柴山 充弘 東京大学, 物性研究所, 教授 (00175390)
• 研究分担者: 則末 智久 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助手 (40324719)
• キーワード: ゾルゲル転移 / パーコレーション / 動的光散乱 / 光子相関 / 小角中性子散乱 / 結合不均一性 / 結合相関 / 架橋不均一性

研究概要

ゾルーゲル転移は、非結合一結合を問題とするパーコレーション問題の対象の一つである。また、ガラス化の問題とともに臨界現象とも密接に関係した現在の物理学、特にソフトマターの物理あるいは複雑液体の物理、における興味あるテーマの一つである。本研究では、非破壊的・非接触的にゲル化点・ガラス化点を決定し、かつ、それぞれゲル化・ガラス化のメカニズムを分子の動力学の立場から議論する新規な手法-時分割動的光散乱法-を提案した。平成12年度に導入した動的・静的光散乱装置(ALV/DLS/SLS-5022F-S)を用いて、ポリ塩化ビニルゲル、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミドゲル、ゼラチン、ポリビニルアルコールーイオンコンプレックスゲルなどのゲル化点近傍での結合相関を定量的に解析した。その結果、いずれの場合にもゲル化点において光子相関関数の緩和時間依存性がべき状化し、自己相似的クラスター形成が行われていることが認められた。
一方、小角中性子散乱法により、ゲル化の問題と架橋不均一性との相関について議論し、小角中性子散乱法は架橋不均一性、動的光散乱は結合不均一性に対応し、ゲルの収縮キネティックスに直接関係することがわかった。
さらに、架橋点がシクロデキストリンで構成され、分子鎖軸に沿って移動可能なトポロジカルゲルを調製し、そのゲル化過程、およびゲル化後のダイナミックスを精度良く計測した。そして、架橋点が固定された化学架橋ゲル、架橋点が着脱可能な物理ゲル、およびトポロジカルゲルの3者のダイナミックスの違いを分子論的見地から検討した。

研究成果

• [文献書誌] T.Kawauchi, M.Isshiki, M.Takeda, M.Shibayama: "Characterization of Gel Structure in Poly(vinyl chloride)by Light Scattering 1.Molecular Weight and Process Temperature Dependence"Polymer. vol.42. 3875-3881 (2001)
• [文献書誌] M.Shibayama, T.Norisuye, F.Ikkai: "SANS Studies on Frozen Inhomogeneities and Local Structure in Polymer Gels"J.Phys.Soc.Jpn.. vol.70. 306-310 (2001)
• [文献書誌] T.Motonaga, M.Shibayama: "Studies on pH and temperature Dependence of the Dynamics and Heterogeneities in Poly(N-isopropyl acrylamide-co-Sodium Acrylate)Gels"Polymer. vol.42. 8925-8934 (2001)
• [文献書誌] M.Shibayama, M.Okamoto: "Dynamic Light Scattering Study on Gelatin Aqueous Solutions and Gels"J.Chem.Phys.. Vol.115. 4285-4291 (2001)
• [文献書誌] M.Okamoto, T.Norisuye, M.Shibayama: "Time-Resolved Dynamic Light Scattering Study on Gelation and Gel-Melting Processes of Gelatin Gels"Macromolecules. Vol.34. 8496-8502 (2001)
• [文献書誌] M.Tsujimoto, M.Shibayama: "Dynamic Light Scattering Study on Reentrant Sol-Gel Transition of Poly(vinyl alcohol)-Congo Red Complex in Aqueous Media"Macromolecules. (in press).