研究概要 |
次世代の極超音速機用エンジンとして注目されているスクラムジェットエンジンの技術的な課題として,極超音速流中でいかに速やかに空気と燃料の混合を行うかということが挙げられる.この課題を解決するためには,超音速混合場の定量的な評価が必要である.研究者らはこれまで,安価かつ簡便な水素濃度評価方法として,触媒反応を利用した水素濃度プローブを提案してきた.このプローブを乱流混合場に適用し,乱流構造に起因する高速な濃度変動履歴を計測するためには,プローブが水素濃度の変化に追従できるほど速い応答速度をもつ必要がある.本年度は,白金線とニッケル線(共に,直径25μm,長さ2mm)をX字型に張ったダブルプローブを用い,触媒反応が起こる条件と起こらない条件の同時測定を行い,触媒反応の応答速度を測定した.衝撃波管により水素濃度が不連続に変化する波面を発生させ,この波面に対するダブルプローブの応答速度を測定する.衝撃波管(本年度新たに製作)は試験部が20mm×20mmの矩形である.実験の結果,本衝撃波管により,圧力の立ち上がり時間が5μs以下の鋭い不連続面が発生することが確認された.本不連続面に対する触媒燃焼発熱量の応答を調べた結果,プローブの設定温度を概ね400℃以上にすれば,発熱量の立ち上がりの勾配(dQ/dt)が設定温度に依存しなくなることが明らかとなった.このとき,dQ/dtは主流から白金線表面への化学主の輸送速度が決めており,dQ/dtから主流水素濃度を求めることができる.すなわち,プローブの設定温度を400℃以上にすれば,触媒反応速度は熱や化学種の輸送速度に比較して充分に早いと言え,熱線風速計クラスの応答速度(数十kHz〜100kHz)を達成することが可能であると言える.
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