将来の航空宇宙推進システムへの利用を目指して国内で初めて箔などの可変形物体でない固定構造物をレーザー推進システムにて打ち上げることに成功した。この装置は最高5J/pulse、100Hzの性能を有する高繰り返しパルス炭酸ガスTEAレーザーと本研究で独自に開発したLITA(Laser-driven In-Tube Accelerator、レーザー駆動管内加速装置)を組み合わせて達成されたものである。LITAは他のレーザー推進装置と違いプロジェクタイルを加速管内で加速するため作動気体としてより適当な化学種を用いることができなおかつその圧力を高くすることで推進性能を向上させることが可能である。実用面ではレーザー光追尾が不要であること、何らかの不具合が起こっても外部に被害を与える可能性が極めて低いこと、作動気体を含めて完全に再使用可能なシステムであることなど大きな特長を有する。初年度の平成12年度はこのようなシステムの作動を実証し基本的な推進性能データを取得することを目標としてきたが予定を上回るような成果を得ることができた。まずLITA設計の最重要要素であるプロジェクタイルについて加速管出口からレーザー光を入射し、センターボディー、外部壁で反射したあと背後で集光する光学形状を解析的に設計する方法を確立した。また外周にシュラウドを付けることによって管内での実効摩擦係数が低減できることが分った。推進性能の測定法として振り子による単インパルスの測定、微小空気浮上力による低摩擦軌道上を運動させることによる連続パルス加速度測定装置を開発した。単パルス測定実験では大気空気中にて最高73N/MJの運動量結合係数が得られ連続パルス作動実験でもほぼ等しい結果が得られた。さらに加速管内に9気圧のアルゴンを充填し正味入力4J/pulse、50Hzにて3グラムのプロジェクタイルを垂直に打ち上げることに成功した。
|