研究概要 |
宇宙科学研究所に設備されているレールガン(エネルギー300kJ,レール長1.8m)を使用して実験を行った。この実験のために、薄膜ターゲットを保持する機構、その前後に8本のラングミュアプローブ、薄膜ターゲットの後方に長さ1m径50cmのドリフトチェンバー、ドリフトチェンバーの最後段に高速弾を停止させるための金属ダンパ、から構成される装置を製作した。実験は超高速テレビカメラ(他部門からの借用品)、高速流しカメラ、デジタルビデオカメラをセットして行った。薄膜ターゲットとしては10cm角のアモルファスシリコンの薄膜太陽電池を使用した。実験領域の真空度は10Pa程度である。実験は予備実験を2回、本実験を4回実施した。観測機器の掃引トリガーは、レールガン出口にセットしたワイヤの切断による電気信号を使用した。TVカメラの観測では、レールガンでの放電発光とダンパへの衝突発光の2回の発光が検出された。ラングミュアプローブの計測では、各プローブで検出された信号の前後関係から、薄膜ターゲットからのプラズマ、ダンパからのプラズマ、レールガン銃口からのプラズマの3種類が同定できた。薄膜ターゲット及びダンパからの衝撃プラズマはパルス的な信号であるのに対し、銃口からのプラズマはミリ秒以上のタイムスケールを持っている。プローブへの印加電圧は+30Vと+10V(電流供給用のコンデンサ付き)の2ケースで実験している。ダンパからの衝突プラズマの発生量は極めて多くプローブの信号が飽和し、一部のプローブでは放電が発生した。薄膜太陽電池にはプロジェクタイルとほぼ同じ大きさの穴があいたが、穴の周辺には10cm程度の径で強い熱的な損傷が発生した。穴の周辺部のアモルファスシリコン太陽電池そのものは蒸発し失われていた。放電後レールガンから煤が大量に実験領域に放射されるため、試料及び実験装置そのものが煤で汚れるという問題点があり、これに対する対策を今後とる必要がある。
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