研究概要 |
H13年度は宇宙科学研究所に設備されているレールガンを用いて、薄膜材料の超高速度衝突による破壊実験を行うための衝突実験チャンバの整備、プラズマプローブによる計測システムの製作を行い、それを用いた予備的実験と本実験を開始した。本年度は、薄膜材料の支持ホルダー及びプローブによる計測系の改良を行い、種々の物性値の異なる薄膜材料に関する破壊実験を実施した。実験に用いた材料は、膜厚の異なるアルミニウム(12.5μm,25μm,50μm,100μm,200μm)、密度及び熱伝導特性の異なる材料の比較として膜厚100μmのアルミニウム、鉄、ニッケル、ニオブで実験を行った。また、膜厚100μmの鉄を用い破壊現象の飛翔体速度への依存性を調べた。また、本年度は九州工業大学の2段式ガス銃を使用した衝突実験を行った。そのための衝突チャンバの整備、計測系の改修を実施した。宇宙科学研究所のレールガンの実験では飛翔体の速度は約4km/sで実験を行い、九州工業大学のガス銃(Heガス使用)では約2〜4.4km/sの速度で実験を行った。飛翔体はいずれも質量約1gのポリカーボネートを用いている。計測装置はどちらも高速度流しカメラと固定バイアスのプラズマプローブである。 薄膜材料の衝突による物理的破壊現象に関しては、膜厚が100μm以上に厚くなる場合はほほ飛翔体の大きさと同じ貫通孔が生じるのに対して、薄い場合は大きな亀裂と著しい材料変形が生じることがわかった。また、衝突直後、薄膜材料から飛翔体と同一方向及び反対方向へ拡散する発光現象が流しカメラによって観測され、プラズマプローブによりその発光と関連して荷電粒子がモニタされた。飛翔体進行方向へは飛翔体とほぼ同じ速度で荷電粒子は拡散し、後方への拡散速度は膜厚に依存し、膜厚の増加に対して1/2乗で速度は増加した。膜厚の増加により衝突時に発生するエネルギーが線形に増加しそれにより荷電粒子の拡散速度は1/2乗で増加したと推定している。本計測では固定バイアスのため、プラズマ密度を求めるためには電子温度を別途推定する必要があるが、後方への拡散が両極性拡散と仮定すると拡散速度から電子温度の推定が可能となる。来年度は本電子温度推定法の確立を行うとともに、種々の衛星材料に関する測定と破壊特性の評価を行う予定である。
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