本研究では、宇宙空間において宇宙デブリのような超高速飛翔体と宇宙機が衝突した際の破壊現象に関して、特に薄膜材料に着目して、地上実験により物理的な破壊と破壊時のプラズマ生成を中心にメカニズムと各種材料ごとの特性を明らかにし、将来の衛星設計のためのカタログ化を目的としている。 平成14年度は各種材料に関して衝突実験を行った。実験に用いた材料は厚さ0.1mmのアルミ、鉄、ニッケル、ニオブ、銀、及び厚さ1mmのポリイミドである。飛翔体は直径約14mm、重さ約1gのポリカーボネイトのブロックである。実験時の飛翔体の速度は約4km/sである。超高速飛翔体が薄膜に衝突した際、アルミに関しては飛翔体以上の貫通口が開いたが、使用した薄膜でアルミより密度の大きい薄膜に関しては、飛翔体の直径と同程度の貫通口があいただけの破壊状況が確認された。また、ストッパーとして用いたアルミブロックの破壊状況から、銀、ポリイミドの二つにおいては、本実験条件では衝突時に飛翔体が粉砕することがわかった。本結果は今後デブリシールドの設計において有用な知見である。また、密度の異なる材料での実験結果から飛翔体と反対方向へ拡散するプラズマの伝播速度は密度の低い材質では遅く、密度が高いほど速度が速くなることが分った。我々の計測手法では両極性拡散を仮定することにより電子温度推定しており、材料の密度が高いほど電子温度は高くなる。材料の密度増加により衝突時の相互作用が大きくなり、それによって生成されたプラズマの温度上昇を招いたためと推定できる。この電子温度をもとに、衝突時に発生した電子密度を推定した。いずれの破壊状況においても衝突点から数cmのところで電子密度は10^<11>〜10^<12>(cm^<-3>)になることが分かった。
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