研究概要 |
本研究ではリアルタイムキネマティックGPSという高精度の測位システムの性能に着目して,時々刻々の船の運動を計測し,それから加速度,続いて船に作用している力とモーメントを求め,最終的にはその船の操縦運動モデルを同定することを試みた。その概要は以下の通りである。 先ず,練習船広島丸を用いて,最新のリアルタイムキネマティックGPSの精度確認を行い,瀬戸内海の試験海域で船の運動計測に十分な精度があることを確認した。続いて、計測した基準局、船上の3点の位置データから、船の重心の縦、横方向の移動量、船首方位、横傾斜角を求めるとともに、その速度、加速度成分を推定した。この推定計算にはディジタル方式の理想フィルタ技術を利用し、ローパスフィルタ、微分フィルタを船体の運動特性を考慮して適用した。この結果、GPS技術で船の操縦運動の推定が高精度で可能なことを確認した。これから、時々刻々と船に作用する力とモーメントを推定した。 操縦運動モデルを同定するには、適切な数学モデルの選択、パラメータを決定する方法の確立が必要で、このために水槽試験を実施した。船に作用する流体力を直接に計測する拘束試験とエアープロペラで駆動し、自由に航走させる自由航走試験である。拘束試験に関してはCircular Motion Testの手法の開発を行い、精度良く流体力の計測が可能であることを確認した。また、自由航走試験の運動を計測より、船に作用する力とモーメントの同定を行う可能性も検討し、精度の重要性が分かった。 広島丸の結果から、小さい湾に特有の潮流の影響が確認され、それを考慮してモデルの同定を行うには同船の拘束操縦試験が必要で、準備中である。要約すると、本研究では自由航走する船の運動からモデルを同定する可能性を確認し、実海面で実船で行う方法にするための課題が抽出できた。
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