研究概要 |
本年度は、垂直応力のみならずせん断応力も考慮した岩石き裂の透水性試験装置を昨年度に引き続いて作製するとともに,一定垂直応力でのき裂の時間依存的閉鎖挙動に関する理論的研究を行った.製作した試験システムを用いて予備実験を行った結果,通常の封圧三軸試験のように封圧を一定に保持した状態で軸荷重を増加させてき裂をせん断変形させると,同時にき裂面への垂直応力も増加するため,き裂透水性に及ぼす応力の影響を定量的に評価することが困難であることが判明した.そこで,垂直応力を一定に保持するために,封圧を軸荷重に従って減少させる封圧制御装置を設計・製作した.本装置は,三軸圧力容器の容量を考慮して手動ポンプで所定の封圧を加えた後,往復動型の微量吐出ポンプ(吐出量0.7〜7.1cc/min)を駆動して封圧を減少させる.コントローラの追随制御を用いて軸荷重に対する追随制御を行った結果,所定の封圧減少を精度良く実行することを確認した.このことから,載荷系(大型圧力容器,サーボコントロール型材料試験機(容量100t),封圧載荷用微量吐出ポンプユニット),透水試験系(定流量水ポンプ,電子天秤),変位・温度系(カンチレバー式せん断変位計,πゲージ式き裂変位計,温度ゲージ)ならびに測定・記録系(データロガー,パソコン)から成る本試験システムがほぼ完成した.傾斜角45°の人工き裂面(研磨面)を有する断面100mm×100mm,高さ200mmの岩石試料を用いて予備実験を行った結果,現在のシリコーンを用いたシール方法では十分な大きさの封圧には耐えきれないことが判明し,シール方法の改善を検討中である.一定垂直応力のき裂の時間依存的閉鎖挙動に関する理論的研究では,ランダムな突起を有するき裂の時間的依存的閉鎖挙動の粘弾性理論を構築した.本理論は,岩石の緩和係数が求められれば垂直応力-弾性的閉口変位関係からき裂の最終変位が予測できること,垂直応力-弾性的閉口変位関係がGoodmanの式に従う場合には時間依存的閉口変位は垂直応力に依存しないことを明らかにしている.また,時間依存的閉口変位のシュミレーションコードを開発し,垂直応力-弾性的閉口変位関係がGoodmanの式に従う場合に時間依存的閉口変位は垂直応力に依存しないのは,垂直応力が大きいほど時間依存的な接触面積の増加が大きいためであることを明らかにした.
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