研究概要 |
本年度は,昨年度開発したせん断透水試験装置を用いて三軸圧縮応力下で垂直応力が一様かつ一定でせん断変形を受けるき裂の透水試験を行うとともに,一定垂直応力でのき裂の時間依存的閉鎖挙動を予測するために,岩石の緩和係数を実験的に求めるための試験装置を開発し,得られた緩和係数を用いて,すでに開発したき裂の時間依存的閉鎖挙動に関する理論に基づいた予測と従来の実験結果との比較検討を行った.その結果得られた本年度の主な研究成果をまとめると以下のようである. 1)斜めの人工き裂面を有する直方体岩石試料を用いて試験片のシール法について検討し,耐圧が20MPa,許容せん断変位7mmの被覆法を完成した.本被覆法では,き裂の側面部は金属板で,き裂の上下端部はシリコンゴムシートでカバーした後全体をシリコーンで被覆する. 2)人工き裂面に作用する垂直応力を一定かつ一様に保ちながらせん断-透水試験を実施した結果,人工き裂面に固有なスティックスリップが生じた場合には垂直応力とせん断応力が一時的に低下するが全体としては垂直応力を一定に制御できることを確認するとともに,せん断変位に伴うシェアダイレーションならびにそれに伴う透水性の変化を評価した. 3)温度制御された剛円柱圧入試験により弾性定数E'ならびにそれに対応する緩和係数Y_<E'>(t)を評価する装置ならびに方法を開発した. 4)花崗岩と砂岩の緩和係数を評価した結果,圧入量の増加または圧入棒の断面積の減少に伴う垂直応力の増加とともに緩和係数の低下率が大きくなることを明らかにした. 5)得られた緩和係数を用いて一定垂直応力下におけるき裂の時間依存的閉口変位のシミュレーションを行った結果,時間依存的閉口変位の垂直応力依存性が花崗岩に対しては無く,砂岩に対しては有るという既往の実験結果を定性的に再現したものの,予測した閉口変位ははるかに小さな値であった.これは,接触面積の相違による寸法効果な主な原因であると考えられた.
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