研究概要 |
SAGD法は,重質油層およびオイルサンド層に水蒸気を圧入し,その加熱で流動しやすくなった原油を重力の作用で採収する商業生産法であるが,従来のSAGD法の理論を適用した数値解析結果とフィールド試験結果に相違があることも指摘されている。とくに水蒸気が凝縮するチャンバー界面部分のミクロ的な熱・物質移動現象と生産レートとの関係についてはまだ多くの点で未解明な部分が多い。本研究では,SAGD法の生産流体中で生成が確認されているエマルションの生成メカニズムを実験的に明確にするため、油層内部に挿入する光ファイバースコープおよび油層モデルへの取り付け機構,とくに光ファイバの耐熱性試験,水蒸気のシーリングに関する設計および油層モデルの製作および既存生産装置の改良を実施した。これを油層モデルに適用し,チャンバー界面での水蒸気の凝縮機構と油の挙動に関するデジタル画像2種の取得に成功した。さらに,油層シミュレータSTARSを用いて本実験モデルの測定結果に関するヒストリーマッチを実施し,チャンバー界面でのミクロ的現象を近似的に再現するために,3相を考慮したストーンモデルと呼ばれる濡れモデルが有効であることがわかった。なお,アサバスカオイルサンドのフィールド試験で生産されたビチューメンのエマルションの特性とくに微小水滴に対する水分量を自動水分測定装置で測定した結果数ミクロンオーダーの油中水滴型のエマルションが形成されていること,および実験で得られたエマルションと類似した特徴を有することが明らかになった。
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