研究概要 |
重質油層およびオイノレサンド層からの採油増進による原油生産は,21世紀の石油資源として重要である。とくに,熱回収法であるSAGD法は,水蒸気を油層に圧入加熱することで流動し易くなった原油を重力作用で採収する経済的な生産法であり,重要な新技術と位置付けられている。本研究では,従来のSAGD法の理論を適用した数値解析結果とフィールド試験結果の相違に関して,水蒸気が凝縮するチャンバー界面部分のミクロ的な熱・物質移動現象にその原因があるものと推測し,物理モデル実験と数値解析モデルによって調べた。平成12年度においても光ファイバースコープによって生産流体中でのエマルション生成を確認したが,その解像度に問題点を残したことから,本年度導入した新たに導入した改良型光ファイバースコープを油層内部に挿入し,チャンバー界面での水蒸気の凝縮機構と油の挙動に関するデジタル画像とを取得し,サーモトレーサ画像との比較研究によってエマルションの生成メカニズムを実験的に明確した。さらに,水蒸気チャンバー界面での油生産機構を加速するため,MSSと呼ばれる界面活性剤を初期的に使用するプロセスについての実験的な検証を実施した。一方,油層シミュレータSTARSを用いて界面活性剤の流動特性に与える効果をモデル化する場合において,ストロングフォームと呼ばれる数値モデルが有効であることを明らかにした。 平成12年度の研究成果は,米国石油学会発行のSPEJoumalに掲載された。また,平成13年度の研究成果は石油技術協会で発表したのほか,米国タルサ市で2002年4月に開催される採油増進に関わる国際会議IOR2002で発表予定であり,SPE JournalへもSPE75241として論文投稿された。
|