研究概要 |
研究の目的 コムギに塩ストレス処理をすることにより発現誘導される遺伝子(cDNA)の機能を明らかにし、それを利用したコムギの塩耐性・感受性の遺伝様式を明らかにすると共に、塩耐性コムギ系統の育成を行うことを研究の目的とした。 平成12年度の研究実績 1)塩誘導遺伝子(WESR)の発現解析 5種のコムギにおける塩誘導遺伝子・WESRの遺伝子発現(mRNAの蓄積)を、処理特異性、器官特異性、経時変化をノーザン分析およびRT-PCR法で調べた。その結果、WESR1,WESR5(G6 PDH遺伝子)は塩特異性の一過的誘導を示し、他はABAあるいは浸透圧(マンニトール処理)にも反応を示した。塩ストレス後2時間という短期間であるが、全ての遺伝子は根だけでなく葉においても誘導されていた。 2)塩誘導遺伝子の染色体座位 単離した5種の塩誘導性cDNAを、6xコムギ組換え近交系統(RIL)に基づくRFLP地図上にマッピングした。その結果、WESR2以外の染色体座位が決定できた。 3)QTL解析 RIL66系統の1)種子発芽、2)幼植物試験管内培養、3)分蘖期植物の三発育段階における塩ストレスに対する耐性・感受性を調査した。調査はsingle marker analysisと呼ばれるQTL解析で行った。その結果、1)コムギは三発育段階では異なる塩感受性を示す、2)すべての条件下で計14箇所のQTLが見つかった、3)それらは全てコムギ染色体群に分布していた、事が判明した。 以上のことから、単離されたコムギ塩誘導性遺伝子は塩耐性と何らかの関係があることが証明できた。次年度以降、その機能の解明と、塩耐性選抜DNAマーカーとしての利用の研究を進めてゆく計画である。
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