研究の目的 コムギに塩ストレス処理をすることにより発現誘導される遺伝子(cDNA)の機能を明らかにし、それを利用したコムギの耐塩性・感受性の遺伝様式を明らかにすると共に、耐塩性コムギ系統の育成を行うことを研究の目的とした。 研究成果の要旨 1)塩誘導性遺伝子の発現解析 5'RACE法および塩基配列解析により、5種の新規塩誘導性遺伝子(WESR)はG6PDH、オオムギうどん粉病抵抗性遺伝子Mloファミリー、転写誘導因子であり、他の2種は機能未知な物であった。径時的発現解析の結果、それらは全て処理後12時間内に最大発現ピークを持つ一過性の発現様式をとっていることが判明した。それらは全て塩耐性コムギでは感受性系統に比し発現量が低かった。 2)染色体座位とQTL解析 5種の塩誘導性遺伝子の染色体座位を決定した。それらの内の2種は6倍性コムギ近交組換えで作成した塩反応性QTLと一致したが、その効果は低かった。また一つは日長反応性QTLと一致した。 3)形質転換 未熟胚由来カルスにパーティクルガン法で、強発現プロモーターを添加したWESR4遺伝子を形質導入した。再生植物から導入遺伝子をホモで持つ個体を6系統得た。それらは全て有意に高遺伝子発現していたが、塩反応性については顕著な差が見られなかった。
|