研究概要 |
本年度の研究実績は学会発表8報である。まず高温及び遮光条件での登熟が蓄積系である胚乳のアミロプラストの構造に及ぼす影響を詳細に検討し,高温登熟が小型のアミロプラストを,遮光が収縮程度の大きいアミロプラストを,それぞれ著しく増加させること,これらが米粒の白色不透明化を招き,品質低下に直結する要因であることを明らかにした。また,転流・転送系構造である背部維管束と珠心表皮の退化過程に及ぼす高温登熟の影響を詳細に解析し,高温ストレスが珠心表皮の退化を早め胚乳腹部のアミロプラストの異常による登熟不良を招くこと,さらに背部維管束の珠心突起部における栓物質の形成・沈着を促進して転流ルートの封鎖を早め,胚乳背側部のアミロプラストの異常と登熟不良を招き玄米品質の低下と不完全登熟粒の増加に直結することを初めて明らかにした。次に,一時的な高温と乾燥条件が水稲の登熟に著しい悪影響を及ぼすフェーン現象により増加した不完全登熟粒を詳細に解析し,アミロプラストの異常形態が多発し玄米品質が悪化していること,屑米率の増加の要因は登熟後期のストレスによる胚乳細胞の肥大成長の抑制とアミロプラストの増殖異常などに伴う玄米粒厚の減少であることを明らかにした。さらに,水稲の登熟問題の重要課題である,いわゆる強勢穎果と弱勢穎果の特徴について,出穂までの穎果の発育程度の差が最終玄米重を左右すること,弱勢頴果の子房では初期の胚乳細胞形成が遅延していることを示した。また,水稲玄米で認めたデンプン粒の分解と全く同様な分解像がコムギの胚乳でも認められることを明らかにした。
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