| 研究概要 |
前年度までの成果を踏まえて,イネで耐乾性程度の異なる品種を材料に,根の皮層細胞長の推移を根端側から順次調査した.各品種ともに根の先端から基部に向かう過程で細胞長は振幅を示したが,耐乾性の高い品種では,培地の水分率が低い条件下では伸長帯における細胞長の増加が著しくなる傾向が認められた.すなわち,イネの根の伸長や,水分条件に対する根伸長量の反応に見られる品種間差異には,伸長帯における細胞伸長の様相が密接に関与していた.また,根の細胞壁は耐乾性で根の伸長速度の大きい品種で肥厚が著しく,内皮細胞でその差力が顕著であった.ただし,根の基部側における伸長しきった細胞の長さには,品種間で明瞭な際がなく,根端における細胞分裂活性や根の伸長方向が根系の垂直分布に及ぼす影響も大きいものと考えられた.そこで,トウモロコシを材料に,とくに根冠部の形態に着目し,根の伸長にともなう根冠内のコルメラ組織やアミロプラストの発達過程を観察して,根の伸長角度の経時変化との対応を解析したところ,コルメラ組織の縦方向の拡大やアミロプラストのサイズの増大にともなって次第に根が下を向いていくこと,こうした根冠と伸長角度との関係には,根の発根した節位によって違いがあることが確認された.また,イネの根では特に内皮の発達にともなって細胞壁にケイ素が沈着するが,その程度に耐乾性や深根性と対応した品種間差異がみられることから,深根性の陸稲品種IRAT109を材料にケイ素の沈着機構を内皮細胞壁の分化・成熟と関連づけて検討した.
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