根冠脱落細胞(Border cell)による土壌の摩擦抵抗減少効果の判定

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12460010
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 飯嶋 盛雄 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (60252277)
• 研究分担者: 森田 茂紀 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (00143404)
• キーワード: 国際情報交換 / 根冠 / 成長圧 / 脱落細胞 / トウモロコシ / 土壌の機械的抵抗 / 粘液分泌 / Border cell

研究概要

本研究では、根冠脱落細胞(Border cell)が土壌と根の界面に存在しクッションのような緩衝帯様の働きをするという仮説に着目した。すなわち、Border cellが担う生態的役割の一つとして、土壌と根の界面に生ずる摩擦抵抗は、根冠由来のBorder cellによって減少することを多面的に実証することを目的とした。
今年度の研究では、2001年11月に海外共同研究者であるPeter Barlow氏が来日し、研究代表者および分担者とともに研究に関する打ち合わせと研究討論を行った。昨年の研究では、トウモロコシ種子根の根冠は土壌の抵抗の約40%を減少させる働きを持つことを明らかにした。これは根冠から分泌される粘液とBorder cellの両者の働きによるものと推定できる。そこで、本年度の研究では、粘液とBorder cellのそれぞれがどの程度、土壌の摩擦を減ずる効果があるのかを定量するため以下の実験を行った。
根冠除去の有無に加えて、根冠粘液をいったん拭い取り、その後2μ1の粘液を加える区、つまり粘液の有無という区を設けた。根冠除去かつ粘液無しの区(Decap-Non Mucilage)が、粘液もBorder cellも無い処理区とする。一方、根冠除去をしないインタクト区かつ粘液を加えた区(Intact-Mucilage)が粘液もBorder Cellも共に持つ区となる。以上から4つ処理区を設け、根の伸長量と直径肥大率ならびに根の成長圧を測定した。
粘液を拭い取った効果は、圧縮条件下では約12時間程度続いた。柔らかい土壌条件下では、根冠除去と粘液の有無は、根の生長速度と根の肥大程度には影響しなかった。それに対して圧縮土壌では、根の伸長速度と肥大率は処理区間で異なった。その結果、根冠の存在によって減少した土壌の抵抗のうち、粘液により46%、境界細胞により54%の抵抗が減少することを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] T P.Rao, Yano K, Iijima M, Yamauchi A, Tatsumi J.: "Regulation of rhizosphere acidification by photosynthetic activity in cowpea (Vigna unguiculata L.Walp) seedlings"Annals of Botany. 89. 213-220 (2002)
• [文献書誌] Higuchi, T., Watanabe A., Bengough, A.G., Iijima, M.: "Border cells in soil-grown maize roots : A technique for their separation from soil particles"Proceedings of the 6^<th> Symposium of the International Society of Root Research. 592-593 (2001)
• [文献書誌] Araki, H., Iijima, M.: "Rooting Nodes of Deep Roots in Two Cultivars with Deep and Shallow Root Systems"Plant Production Science. 4. 215-219 (2001)
• [文献書誌] Bengough, A.G., Iijima, M., Barlow, P.W.: "Image Analysis of Maize Root Caps-Estimating Cell Numbers from 2-D Longitudinal Sections"Annals of Botany. 87. 693-698 (2001)
• [文献書誌] Kang, S-Y., B-K.Kim, S.Morita: "Leaf-stem cutting culture as a rapid method for characterizing rooting habit of rice cultivars"Korean Journal of Breeding. 33(3). 175-180 (2001)
• [文献書誌] Ichimaru, K., T.Homma, S.Morita, J.Abe, J.Yamagishi: "Electrice potential as a possible index for physiological activity of maize root system"Proceedings of the 6^<th> Symposium of the International Society of Root Research. 574-575 (2001)