研究概要 |
1)コダカラベンケイソウ葉から呼吸調節比が1.6〜1.8の満足のできる無傷ミトコンドリアの単離を得ることに成功した.得られたミトコンドリアでのシアン耐性呼とシアン感受性呼吸の割合は,それぞれ33±8.2%と59±3.9%であった. 2)気相型酸電極法を用いてパインアップルとセイロンベンケイソウ葉における酸素及びCO2濃度に対する酸素発生能を調査した.特に酸素反応においてパインアップルも10%以下の酸素濃度下で酸素発生速度の抑制が認められ,パインアップルにおいてもphase3のリンゴ酸消費にミトコンドリアのシアン耐性呼吸系が関与していることが示唆された.しかし,パインアップ葉での酸素発生能はセイロンベンケイの2〜3倍高いことも明らかになった.このことは,パインアップルのCAM型光合成が低酸素条件下で抑制されない一因は,光の下での酸素生成活性の高さによるものであることを示唆するものである. 3)差動型酸素分析計を既存のCAM型光合成測定系へ組込み,CAM着生葉での酸素交換の測定系の開発を試みた.予備的な成果であるが,パインアップルの酸素発生能はphase3でphase4に較べ10倍程度,セイロンベンケイに較べても両phaseで10倍程度高いことを示唆する結果が得られている. 4)蛍光分析計におけるCAM植物における光合成電子伝達系の評価を試みた結果,セイロンベンケイソウにおいてその効率が低いことを示唆する結果が得られた. 以上のように,CAM型光合成における酸素感受性メカニズムにおけるシアン耐性呼吸の評価や酸素発生能の種間差について興味深い成果が得られた.
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