研究概要 |
平成14年度においてパインアップル・ミトコンドリアにおいてはリンゴ酸・アスパラギン酸シャトルがCAM型光合成とリンクする形で機能していることが示唆されたために,その確認の実験を行った.結果は,パインアップル・ミトコンドリアはリンゴ酸・OAAシャトルを用いてリンゴ酸とOAAの相互転換系と関係していることがほぼ確定され,この系は,パインアップルのCAM型光合成のphaseIIIにおけるリンゴ酸の脱カルボキシル化をサポートする系として機能していることが示唆された.つまり,この系を用いてパインアップルのミトコンドリアはミトコンドリア・マトリックスでリンゴ酸を酸化し,結果として生じるNADHはATP合成をもたらし,さらに生じたOAAはミトコンドリアから細胞質へ輸送され,細胞質におけるPCKの基質として利用されるものと考えられ,このことはCAM型光合成の脱炭酸過程に新たな代謝過程の存在を示唆するものである. 次に,低酸素濃度に対する反応の種間差を検討する研究を行った.カトレア,デンドロビュウム・サクラ,デンドロビュウム・ブラナジェイド,コチョウラン,バンダはCAM型CO2交換を維持したが,アロエ,セイタカベンケイはCAM型CO2交換を消失した.PCK型CAMに類別されるアロエは低酸素感受性を示し,ME型CAMに類別されるラン類が低酸素感受性を示さなかったことから,CAMの低酸素感受性はサブタイプによるものではないことが確認されるとともに,単子葉植物と双子葉植物という視点からも分類できない可能性が示唆され,CAM型ガス交換の特性がSuper-CAMに近いほど酸素濃度に反応しない可能性が示唆された.
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