研究概要 |
1.ナシ赤星病反応性の遺伝解析並びにナシ果実の諸形質の遺伝解析(伴野分担) ニホンナシの主要病害の1つであるナシ赤星病に対する反応性について、ニホンナシ'おさ二十世紀'×セイヨウナシ'Max Red Bartlett' (Os x MRB)及びそのF1品種'大原紅'との交雑系統(Os x Ob)について検定した。その結果、両者の交雑系統において抵抗性と感受性の個体がほぼ1:1で分離したことから、'MRB'及び'大原紅'はナシ赤星病抵抗性遺伝子をヘテロで有することが示唆されるとともに、これらの品種を利用してその抵抗性をニホンナシへ導入することが可能であるものと考えられた。 一方、結実したOs x Ob 46系統、Os x MRB 7系統及び,おさ二十世紀'の自家交雑39系統について、果皮色、成熟期、果重、果形指数、糖度、硬度、酸含量、追熟成などの果実形質を調査し、これらの形質の遺伝分散を解析した。その結果、果皮色、長果形形質及び追熟成形質についてはOs x Ob系統でほぼ1:1に遺伝分離したことから、これらの形質は'大原紅'由来の一対の優性主働遺伝子によって支配されるものと考えられた。また、これ以外の果実形質については連続的な分散を示したことから、量的形質によって支配されていることが示唆された。 2.ナシの連鎖地図作成におけるSSRマーカーの利用と有用形質のマッピング(千分担) 19種類のリンゴ及びニホンナシ由来のSSRプライマーを用いて、Os x Ob系統について解析した結果、17種類で明確な増幅が認められ、合計32種類のヘテロ接合性を示す多型マーカーが得られた。これまでに得られているS遺伝子型、アイソザイム遺伝子型、RAPDマーカーを含め、MAPL98を用いて連鎖地図を作成したところ、'大原紅'で833.8cM,15連鎖群、'おさ二十世紀'で212.8cM、7連鎖群からなる連鎖地図がそれぞれ作成された。また、一対の主働遺伝子によって支配されると考えられた果実の長果形形質及び追熟性形質について連鎖解析を行った結果、長果形形質(Fsl)は'大原紅'の第4連鎖群に、追熟性形質(Rip)は第8連鎖群のS遺伝子座と同位置にマッピングされた。さらに、両品種に共通のSSRsが6遺伝子座マッピングされたことから、これらの共優性マーカーを用いて'おさ二十世紀'と'大原紅'の連鎖地図を統合できる可能性が示唆された。
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