研究概要 |
ブドウ果実のアントシアニン生成に及ぼす光条件の影響を詳細に調査するため,赤色(R)および遠赤色(FR)発光ダイオードで照射したところ,'グローコールマン'果実のアントシアニン生成は,赤色光により促進され,生成量はその強度に依存すること,R/FR比が1.0〜0.5の範囲での遠赤色光の共存は,赤色単色に比べ,アントシアニン生成量をやや増加させるが,R/FR比が0.5以下となるFRの照射では,生成量は低下することが明らかとなった. 栽培条件の異なる'安芸クイーン'収穫果のアントシアニン含量は高冷地産で多く,暖地の加温ハウス産がこれに次ぎ,暖地の露地産で少なかった.アントシアニン含量が多いほど明度が低い一方,彩度が高く,またその組成比が加温・無加温ハウスおよび高冷地産と暖地の露地産では異なった.クロロフィル含量は加温ハウス産で多く,無加温ハウスと暖地の露地産で少なかった.'安芸クイーン'の成熟開始期にABA処理,白色または黒色の袋掛けおよび成熟期間を通して紫外光照射を行った.アントシアニン含量はABA処理で最も多かったが,PAL活性との関係は明確でなかった.処理区間でアントシアニンの組成比に違いがみられたが,クロロフィル含量には差がなかった. 着色品種の'ピオーネ'と'グロー・コールマン'を供試し,ABA処理によるブドウ果皮のアントシアニン生成促進とmyb遺伝子の発現との関係を調査した.5種のmyb様遺伝子断片が得られ,そのうちG-myb20とG-myb11プローブにハイブリダイズする遺伝子発現は両品種のアントシアニン蓄積に先立って認められた.このことから,ABA処理はmyb様遺伝子発現の促進を介して,種々のアントシアニン生合成系遺伝子発現を誘導することによってアントシアニン生成を促進していることが推察された.
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