研究概要 |
ヒアシンス(Hyacinthus orientalis L.cv. Delft Blue)の球根内葉原基を,IBA 1mgl^<-1>を含むMS培地に置床し,シュートが1cm以上に生長した外植体を用いた.5℃暗黒下で培養する低温処理区と,25℃連続照明下で培養する無低温処理区を設け,培養10日目から12週目にかけて外植体を採取した.また,葉原基からシュートを切り出し,ABA0または1mgl^<-1>を含むMS培地に置床し,25℃連続照明下で培養するABA処理区と対照区を設け,培養2週目から10週目にかけて外植体を採取した.採取した外植体から全RNAを抽出し,cDNAを合成した.得られたcDNAを鋳型として,ランダムプライマーCMN-A00〜19およびOPA-01〜20を使ったPCR反応を行った.このPCR増幅産物のアガロースゲル電気泳動(ディファレンシャルディスプレイ)を試みた. ディファレンシャルディスプレイでは,外見上,球形成がおこる以前の外植体にPCR増幅断片の多型がみられ,低温処理やABA処理による遺伝子発現調節が低温処理後,早い段階から開始されていることが示唆された.低温処理区で特異的に発現していたPCR増幅断片のうち,処理10日目でみられた4断片(CMN-A03,1200bp ; CMN-A08,1200bp ; CMN-A10,1400bp ; CMN-A12,1000bp),処理7週目の1断片(CMN-A02,1000bp)および処理8週目の1断片(OPA-08,1000bp)がABA処理区でも特異的に発現していた.In vitroにおけるヒアシンスの球形成は低温によって誘導され,ABAの制御下にある(伊井ら,2000)ことから,低温処理区とABA処理区で共通してみられた断片は,球形成に関わる発現遺伝子のPCR増幅断片である可能性が考えられる.
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