研究概要 |
この研究は、ハダニに感染しているWolbachiaの系統、感染量と不和合性発現、垂直伝播率、Wolbachiaの人工培養と微量注入による質的評価を行う目的で行った。 (1)Wolbachiaの感染率と感染系統の解析:日本産ハダニ科80種のうち、41種について感染の有無を検討した結果、7種がW感染していた(17.1%)。7種のうちの2種、クワオオハダニとブナカハダニが、感染雄と非感染雌との交配で不和合性を誘起するmodification positive系統に感染していた。残りは、寄主の生殖に影響しないmodification negative系統であった。 (2)ハダニの不和合性:クワオオハダニでは、Wolbachiaによる非感染個体群との不和合性、Wolbachia系統の違いによる感染個体群間の両方向の不和合性、核-核の相互作用による不和合性、核-細胞質の不親和性による不和合性が見られた。 (3)Wolbachia感染量と不和合性発現の関係:ハダニが保有するWolbachiaの量をreal-time quantitative PCRで検討した結果、ダニではWolbachiaの量が不和合性発現の直接的な原因ではなかった。 (4)Wolbachiaの垂直伝搬率:クワオオハダニとカンザワハダニにおいて、100%感染個体から次世代への感染率は、不和合性の発現の有無に関わらずほぼ100%の垂直感染率を示すことが分かった。 (5)Wolbachiaの人工培養と微量注入による質的評価:ヒトスジシマカの培養細胞株を用いて、Wolbachiaの人工培養に成功したので(Noda et al.,2002)、クワオオハダニのWolbachiaを培養して、ショウジョウバエの卵に微量注入したが、感染させることが出来なかった。異なる培養細胞を用いると細菌密度が高まること、雑菌除去にはWolbachiaに影響がないペニシリンとストレプトマイシン混合剤を用いることで問題を解決できることまでは突き止めている。 (6)新たな細胞内共生微生物CFB:2001年に、雌しか知られていないミナミヒメハダニからCFB細菌が検出された。汎用性のあるプライマーで16S rDNAを増幅し、それらのDNA塩基配列のホモロジー(類似度)によって細菌を特定した結果、一部のハダニにCFB細菌が感染していることが分かった。
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