昆虫AChEのアミノ酸高度保存領域に対応するプライマーを使ったPCRにより、コガタアカィエカ、イエバエ、イネドロオイムシ、ツマグロヨコバイ、ワタアブラムシ、モモアカアブラムシ、ナミハダニ、コナガのAChE・cDNAをクローニングし、その配列を明らかにした。それぞれの害虫で感受性系統と抵抗性系統のAChEアミノ酸配列を比較したところ、イエバエではアミノ酸置換が認められ、その他の害虫では感受性低下の原因となる置換は見られなかった。イエバエAChE遺伝子をバキュロウィルスに組み込み培養細胞Sf9で発現させると、対応した感受性及び感受性低下のAChEが得られた。感受性、抵抗性系統間でAChE・cDNAにアミノ酸置換がないコガタアカイエカのAChE遺伝子をカイコ培養細胞で発現させると当然ながらどちらからも感受性AChEが得られた。さらに、コガタアカイエカの有機リン剤抵抗性因子の連鎖群解析結果は、AChE構造遺伝子と感受性低下因子とが別の染色体に存在することを示したことから、我々の得た結果を素直に解釈し、キイロショウジョウバエ、イエバエなどを除く殆どの昆虫、ダニではAChE薬剤感受性低下の要因はAChE構造遺伝子にはなく、蛋白が高次構造を形成する間に働く修飾要因が感受性低下を決定していると結論される。遺伝子レベルでの修飾遺伝子追求は現在の研究段階ではかなり困難と思われる。そこで、コガタアカイエカの感受性、感受性低下AChEを精製して、両者を比較することで、感受性低下AChEではどのような修飾が起きているかを探ることにて、AChE阻害剤観リガンドとしたアフィニティ・ゲルによる精製を試みた。その結果、感受性AChEは使用したゲルで分離できるが、感受性低下AChEではゲルに非常に吸着し難いことが判明し、感受性低下となる構造変化の場所が推定された。
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