エンドウ褐紋病菌由来のエリシター処理により発現が誘導されるエンドウ遺伝子のcDNAとしてE84が単離されている。E84の遺伝子産物はアミノ末端付近にDof DNA結合タンパク質ドメインを有することから防御応答時に発現の変動する遺伝子の転写を制御する植物特有の転写因子であると考えられた。そこでE84タンパク質のDNA結合特異性を解析することを目的として大腸菌で発現させたE84組換えタンパク質を用いてランダム結合選別法を行い、E84の至適結合配列を解析した。その結果、E84に結合するとして単離されたDNA配列は全てAAAG配列を有しており、周辺のヌクレオチドはその出現頻度からTTT/cT/cT/gT/a AAAG TGT/cTTTの配列が至適であると思われた。E84結合配列の一つBS4/37(TCATTTAAAGTGTTTT)をモデルとしてAAAG前後の配列に変異を導入して結合実験を行ってみるとAAAGの3'側のTGT配列も高い結合親和性のために必要な配列であることが明らかとなった。また、エリシター応答性のPsCHS1遺伝子のプロモーターとの結合実験を行ってみたところ、いくつかに分割したプロモーター配列の中でAAAG配列を有する断片に結合した。特に複数のAAAG配列を有するDNA断片により強く結合した。一方、E84結合配列BS4/37を4つ直列に連結し、CAMV35Sプロモーターの最小単位に連結させ、エンドウプロトプラストを用いたトランジェントトランスフェクションアッセイを行った。その結果、エリシター処理によりレポーターの活性が高まり、AAAG配列の直列繰り返し配列がエリシターによる転写活性化に関与したことが示された。また、E84タンパク質はE84遺伝子自身のプロモーター配列にも結合することより、正のオートレギュレーションを行っている可能性も示唆された。以上のことはE84タンパク質及びその結合配列がエリシターによる転写の活性化に貢献している可能性を示している。
|