研究概要 |
ウリ類炭そ病菌のFUS3/KSS1MAPキナーゼホモローグCMK1が胞子発芽、付着器形成、宿主内進展など病原菌の感染プロセスに重要な働きをもつことを明らかにしてきた。一方、出芽酵母においてはFUS3/KSS1MAPキナーゼ信号伝達系を介して転写因子STE12が有性生殖、偽菌糸生育に要する細胞特異的・形態形成特異的な遺伝子発現を制御することが知られている。本年度の研究では、12年度の研究でクローニングに成功したウリ類炭そ病菌のSTE12様遺伝子CST1(Colletotrichum Ste12 like)の遺伝子破壊実験を行い、CST1の機能解析を行った。CST1破壊株のコロニー生育、胞子形成は野生株と同等であったが、胞子を無傷キュウリ葉に接種しても全く病斑は形成されなかった。一方、有傷処理したキュウリ葉では病斑形成が認められたものの病徴形成は野生型に比較して顕著に遅延した。破壊株の感染行動について調べた結果、破壊株胞子の多くは発芽後,遅延が起こるものの可視的には野生株同様の付着器を形成した。しかしながらキュウリ葉セルロース人工膜上のいずれにおいても侵入菌糸形成は認められなかった。これらの結果から破壊株の病原性欠失は、宿主への侵入能欠損に起因していると考えられた。以上、CST1がウリ類炭そ病菌の宿主内進展、付着器からの侵入菌糸形成に強く関与していることを示唆する結果を得た。
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