ウリ類炭そ病菌のFUS3/KSS1MAP)キナーゼホモローグCMK1が胞子発芽、付着器形成、宿主内進展など病原菌の感染プロセスに重要な働きをもつことを明らかにしてきた。FUS3/KSS1MAPキナーゼ信号伝達系の制御下にあると推定される転写因子CST1(Colletotrichum Ste12 like)の遺伝子破壊実験を行い、CST1の機能解析を行った。CST1破壊株胞子は形状的には野生株様の付着器を形成した。しかしながら付着器細胞内の脂肪顆粒の形状、付着器成熟過程での顆粒数の変化は野生型株に比較して異なっており、宿主葉、セルロース膜に対する侵入菌糸形成能を欠落していた。この結果からCST1はウリ類炭そ病菌の付着器からの侵入菌糸形成に必須であり、これに脂肪代謝が関与している可能性が示唆された。一方、本年度の研究では情報ネットワークに関連する遺伝子の網縄的探索を目的としてアグロバクウムによるウリ類炭そ病菌の形質転換および遺伝子破壊実験系を確立した。ハイグロマイシンおよびビアラホスを選択マーカーとする糸状菌形質転換用のバイナリーベクターを構築し、これを導入したアグロバクテリウムとウリ類炭そ病菌の胞子を混合培養することにより効率的に形質転換株を取得することに成功した。さらに得られた形質転換株の病原性、および侵入器官の形態形成能の調査により、20株以上の機能欠損変異株を同定した。次に各形質転換株についてTAIL-PCR法によるT-DNA挿入隣接ゲノム領域の回収および遺伝子相補実験を行った結果、複数の新たな病原性および侵入器官の形態分化に関与する遺伝子の同定に成功した。
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