研究概要 |
1.カイコゲノムからの新規時計関連遺伝子の探索 カイコのESTデータベースからショウジョウバエのtimeout(tim2)に遺伝子に相同な塩基配列を1個発見した。このcDNAの塩基配列を決定したところ、全長が2340塩基対であり、752アミノ酸残基をコードするORFが認められた。この遺伝子をBmtimeoutと命名した。また,6-4フォトリアーゼ/クリプトクロームファミリーに属する新規遺伝子を2個発見した。そのうちの一つ(遺伝子記号Bmphr6-4と命名)は1907塩基対からなるcDNAであり,501アミノ酸をコードする完全長のORFが認められた。もう一方の遺伝子(BmCry-γと命名)はゼブラフィッシュのCryptochrome2aに高い相同性を示したので,クリプトクロームとして機能している可能性がある。 2.cDNAマイクロアレイを用いたmRNAの日周リズムに関する研究 カイコ5齢幼虫の脂肪体から経時的にpoly(A)+RNAを調製し,約6000個のカイコcDNAを登載したcDNAマイクロアレイ(大手ら,未発表)を用いて,1日24時間のなかでmRNA量が周期的に変化する場合があるかどうか,解析した。その結果,11個の遺伝子にmRNAの日周リズムがあると判断された。特に多量に発現する遺伝子である30Kタンパク質遺伝子およびSP3遺伝子のmRNAは,それぞれ夕方と朝方にピークがあった。 3.光周性に関する遺伝学的解析 Bmper遺伝子がカイコの光周性に関与するか否かを検討する目的で,Bmperの連鎖地図へのマッピングを行った。その結果,BmperはZ染色体にマッピングされたが,光周性に強い影響をもつLm遺伝子座とは異なる座位を占めると推定された。一方,多化性品種輪月を用いた戻し交雑世代のDNAを多型マーカーで調査し,分散分析にかけた結果,輪月の光周性はZ染色体だけでなく常染色体の影響もあることがあきらかになった。
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