研究概要 |
1.カイコのclock相同遺伝子:ショウジョウバエの概日時計遺伝子clockに相同なカイコのcDNA、(Bmclk)の塩基配列は全長7521塩基対であり、585アミノ酸残基をコードしていた。推定アミノ酸配列はショウジョウバエCLOCKと33%の相同性があり、DNA結合に必要なbasic helix-loop-helixモチーフ、およびCYCLEタンパク質との結合に必要なドメインとされるPAS-1およびPAS-2ドメインに相当するアミノ酸配列が、ショウジョウバエCLOCKと高い相同性を示した。RT-PCR法によって5齢幼虫の脳におけるmRNA量の日周変動を検討した。12時間明:12時間暗の条件で飼育した個体を用いたところ、脳の、Bmclk mRNAは、明期から暗期移行後に極大となり、暗期から明期移行後に極小となるよう日周変動を示した。 2.カイコのcry相同遺伝子:マウスのクリプトクローム遺伝子Cry-1に相同なカイコcDNA(BmCry-α)の塩基配列は全長4509塩基対であり、730アミノ酸残基をコードしていた。推定アミノ酸配列はマウスのCRY-1に61%の相同性を示し、DNAとの結合に必要とされる配列や、コファクターであるMTHFやFADに結合するに必要な配列が特によく保存されていた。またショウジョウバエのクリプトクローム遺伝子に相同なcDNA(BmCry-β)の塩基配列は1587塩基であり、308アミノ酸をコードするORFが認められた。推定されたアミノ酸配列は、ショウジョウバエのクリプトクロームと33%の相同性を示した。BmCry-α、BmCry-βとも夜間にmRNA量が多くなり昼間減少する傾向があった。なお、最近もう一つのクリプトクローム相同遺伝子(BmCry-γ)を発見した。これはゼブラフィッシュのCryptochrome2aに高い相同性を示す。 3.cDNAマイクロアレイを用いたmRNAの日周リズムに関する研究:カイコ5齢幼虫の脂肪体から経時的にpoly(A)+RNAを調製し,約6000個のカイコcDNAを登載したcDNAマイクロアレイ(大手ら,未発表)を用いて,1日24時間のなかでmRNA量が周期的に変化する場合があるかどうか,解析した。その結果,11個の遺伝子にmRNA量の日周リズムがあると判断された。 4.光周性に関する遺伝学的解析:Bmper遺伝子がカイコの光周性に関与するか否かを検討する目的で,Bmperの連鎖地図へのマッピングを行った。その結果,BmperはZ染色体にマッピングされたが,光周性に強い影響をもつLm遺伝子座とは異なる座位を占めると推定された。
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