研究課題/領域番号 |
12460027
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
柳沼 利信 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (60135332)
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研究分担者 |
池田 素子 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (20262892)
新美 輝幸 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助手 (00293712)
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キーワード | カイコ / 胚休眠 / 低温誘導性遺伝子 / ソルビトール脱水素酵素 / グリセロールキナーゼ / Hsp70 |
研究概要 |
カイコ卵は、発生の初期(嚢胚期)に休眠に入り、25℃に保護する限り、休眠状態は維持される。5℃に冷蔵され、休眠間発育と呼ばれる過程(約2ヶ月の低温を要求する)が終了して、初めて休眠覚醒が生じる。低温処理から休眠覚醒に至る休眠間発育の間に生じる分子機構を解明するために、低温誘導性遺伝子であるソルビトール脱水素酵素(SDH)遺伝子発現の分子機構を主として明らかにする事を目的とした。 今年度は、新規に単離されたSDH-2遺伝子の発現が低温誘導性であるかを先ず検討した。リアルタイム定量的PCR法を用い、非休眠卵及び休眠卵のmRNA量の変動を調査した。SDH-2 mRNA量の動きは、SDH-1の場合と同じものであった。つまり、5℃冷蔵40〜50日後にmRNAの出現・増加が認められ、低温誘導性遺伝子である事が判明した。Bacクローンを解析し、ゲノミックDNA上にSDH-2、約30kbp離れて次にSDH-1が並んでいる事が明らかとなった。低温誘導に関わる共通の転写調節領域を求めて5'-上流域構造を解析している所である。 SDH-2 cDNAを用い融合タンパク質を大腸菌系で発現させ、SDH活性を測定した所、活性が認められ、ソルビートルに対するKm値は10〜20mM程度であった。休眠覚醒期卵から精製されるSDHは約140mMという高いKm値を持つ事から、SDH-2はこの酵素とは明らかに異なる事が判明した。二種類の酵素の使い分けがどのように調整されるかを明らかにする事が今後の課題である。 休眠覚醒期には蓄積されたグリセロールも利用される。グリセロールキナーゼ活性が5℃冷蔵60日後に出現・増加する事から、この代謝系の律速酵素がグリセロールキナーゼである事を明らかにした。しかしながら、そのmRNA発現は低温では誘導される事がなく、この酵素活性の調節点は、転写レベル後に在る事を示した。 また、5℃処理によるSDH遺伝子発現以前に誘導される遺伝子Samui産物のパートナーとなるHsp70mRNA量が低温で誘導される事、しかし、タンパク質量はmRNA量に並行しない事を明らかにした。
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