イネ葉の展開から成熟、老化過程を通してRubiscoの生成量と分解量を重窒素ラベリング法により調べ、それらの変動とrbcS mRNA、rbcL mRNA、rbcL DNA、total DNAの量的変動との関係を追跡し、葉の一生を通してRubisco量を支配するおもな要因について解析した。 Rubiscoの生成は、葉の一生を通して大小サブユニットのmRNA量の変動に少し遅れながらおよそパラレルに変動した。rbcSおよびrbcLのmRNAsは共に葉の展開前半に最大量となり、葉の展開終了時にはそれぞれ、最大時の三分の一、五分の一以下となった。その後はいずれも、十分の一以下にまで減少した。Rubiscoの生成は葉の展開中頃がもっとも盛んで葉の展開終了直後には最高時の四分の一以下となり、その後はさらに十分の一以下にまで減少した。一方、rbcL DNA量は葉の展開後半に最高値に達したのち徐々に減少していったが、rbcL mRNAほど急激には減少しなかった。Rubiscoの分解は展開終了頃には既に始まっており老化初期にピークがあった。老化過程における分解量は生成量をずっと上回っていた。展開中の第8葉、展開を終えた直後の第7葉、既にRubisco量が第7葉の半分まで減少した第5葉についてみると、第7葉、第5葉のいずれもrbcS量が第8葉のそれの十分の一以下、rbcL量は四分の一以下となっていた。これらの結果より、葉の一生におけるRubisco生成の7-8割は、葉の展開終了時までに終えており、その生成量は葉の一生を通して大小サブユニットのmRNA量とおよそパラレルな関係にあることが分かった。葉の展開終了後は大小サブユニットのmRNA量、なかでもrbcS mRNA量のレベルは特に低く、展開終了後の葉ではRubisco合成のポテンシャルが大きく低下していることが分かった。
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