研究概要 |
本申請研究では,篩管内あるいは伴細胞内に存在するタンパク質の同定を進め,これらの伴細胞-篩管間移行および篩管内移行過程を明らかにすること、また,伴細胞特異的にこれらの発現レベルを変化させた形質転換植物を作成し,篩管内における目的タンパク質量の変化を明らかにし,このことに伴っておこる篩管転流の量的質的変化を追跡することを目的としている。 1.伴細胞および篩管内タンパク質の同定-篩管内に存在するタンパク質の同定は,インセクトレーザー法により得られた純粋な篩管液を大量に(1ml程度)採取し,そのタンパク質を2次元電気泳動で分離した後,それぞれのタンパク質のN端アミノ酸配列を明らかにする手法を用いた。このことにより、分子質量10000Da,21000Da付近、31000Daの篩管液タンパク質のN末端アミノ酸配列を分析することができた。これらの成果に関しては、現在、その篩管内での活性の測定、発現部位の特定を行い、論文としてまとめる予定である。 2.篩管液タンパク質cDNAおよび特異抗体の取得-得られたアミノ酸配列をもとにイネESTクローンを農林水産省より提供を受け、その遺伝子配列を決定し、遺伝子の構造を明らかにした。大腸菌内で得られたcDNAより組み換えタンパク質を作成しこれを用いて特異抗体を得ることに成功した.また,10000Daタンパク質に対する抗体を用いてこのタンパク質の局在性を調べたところ、まだ、シンクとして機能していると思われる葉の伴細胞に局在することが明らかになった。これらの研究成果をもとに、論文を製作中である。 3.伴細胞特異的遺伝子発現制御-すでに,伴細胞特異的発現を示すプロモーターを取得しており,これを用いたイネ形質転換用バイナリーベクターも開発済みである.このプロモーターに,これまで取得されてきた伴細胞あるいは篩管タンパク質のcDNAをアンチセンス(あるいはセンス)方向に連結し,これをもちいてイネを形質転換した.これまでに認められていないような大きなタンパク質でも、伴細胞に発現させると篩管へ導入されることが明らかになった(論文作成中)。
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