研究概要 |
タイ北部メーホンソン県には急峻な傾斜畑作地が広く分布する。熱帯特有の激しい降雨のもと、表面流去ひいては土壌侵食が起きやすい条件にあり、これを回避することは持続的に農業を行うために必須である。本研究では、耕起、敷き藁の施用などの異なる土壌表面処理下における降雨時の土壌水分変化のモニタリングを通して、表面流去発生過程を明らかにすることを目的とした。 調査期間(平成12年5-6月)の累積降雨量は367.5mmで、累積表面流去水量の平均値±標準偏差は耕起区、不耕起区、縦敷き藁区、横敷き藁区でそれぞれ16.6±4.9,18.3±1.7,4.1±1.7,4.2±0.8mmであり、累積土壌侵食量の平均値±標準偏差はそれぞれ1.8±0.4,1.5±0.6,0.3±0.1,0.4±0.1ton/haであった。敷き藁施用区では、表面流去水量および土壌侵食量が非施用区に比べ有意に低かった。 TDRプローブを装備したマイクロロガーによって得られたデータに基づいて、不耕起区と耕起区について降雨時における0-15cm層位の土壌水分の変化を比較したところ、耕起区では降雨に伴う土壌水分の増加が遅れる傾向が見られた。これは耕起によって生じた表層の微起伏に雨水が一時的に滞留することのよるものと推測された。同様に、不耕起区、縦敷き藁区、横敷き藁区について0-15cm層位の土壌水分の変化を比較したところ、降雨強度が6mm/10min以上と高い時には、各区でほぼ等しい水分変化を示したが、1〜5mm/10minと低い降雨強度下においては、特に横敷き藁区で水分変化の小さい傾向が見られた。これは敷き藁がいったん雨滴を吸収した後、縦敷き藁区では20度の傾斜角度があるため雨水が敷き藁内を伝ってすぐに土壌表面へ排水されるのに対し、横敷き藁区では傾斜角度は関係なく敷き藁内にある程度雨水が保持されることによると考えられた。
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